私ね、結婚を申し込まれたのよ、恐ろしく素敵な彼に。
●何せ背が高くて美青年なんだから! 私みたいなデブとはつり合いにならないくらい! 素晴らしい彼が、本当に不意に、「結婚を前提に付き合ってください」って言うなんて、チビでブタで不細工病と日々戦っている私にとって、すごいラッキー!
OKして有頂天だ。
●だけどこれが奈落の落とし穴だった! 気がつかなかった私は馬鹿だよ。
●彼はすべての女の理想だったと思う。容姿がカッコイイだけじゃなくて、仕事が忙しくても私のために時間をたっぷりさいてくれたり、騒がしい私と違って物腰がやわらかで、落ち着いてて、優しい物言いで、私は嫌いなヒゲも彼なら許せちゃった。
●こんな絶品の彼を、ただ飾っとく手はない。有頂天ブタの私は、友人に知人に、女という女に見せびらかした。
●だって苦節ん年のブタ人生だよ。物語の主人公を演じられるチャンスなんかなかったんだもん。小さい頃から、どのお遊戯会の芝居でも、石とか草とか台詞もなしで隅っこにしゃがんでる役ばかり。私がこの世でした大役は、たったひとつ、白雪姫の魔法使いのお婆さんなんだよ。台詞は多かったけど、誰もやりたがらないから私にお鉢が回って来ただけの役。こんな社会の脇役でブタの私が、主人公を演じてきた美人たちと渡り合える幸運なんて、またとない!
●私は美しい彼女たちが、彼を見てうらやましげにヨダレを流すのを、優越感をもって見てたんだ。(後で大失敗とわかったけど、この時は気づかなくてね)
●一気に友人の中でもいちばんイヤな女に名乗りをあげた私は、友人の陰口さえも心地よい勝ち組女。おまけに彼の友人たちにも猫をかぶって面通しすると、好印象。彼の両親には嘘みたいに喜ばれ、「すぐにでも結婚を」って!
これって私の天下だよね。
●天下だ、天下だぁーい! |